本当の自分を生きるための始まり

本当の自分を生きるための始まり:曖昧さを信じる体験

自分を探し続けているのに、どこか満たされない。気づけば、自分らしさよりも「誰かにとっての正しさ」を優先していた——そんなふうに感じたことはありませんか?本当の自分がどこかへ遠のいていくような感覚。その違和感に立ち止まったとき——そこから物語は始まります。

「本当の自分を生きたい」

そう思っているあなたへ。でも、どうすればそれが叶うのか、わからないまま。

これまでにいろんな方法を試してきたかもしれません。でも、これからお話しすることは、それらとは根本的に異なるものです。

これは「新しい視点」ではありません。本物の、本質的な方法なのです。

この文章は、その事実をあなたに伝えるために書かれています。


こんな「繰り返し」に覚えはありませんか?

自己啓発の本を手に取って、「本当の自分を見つけよう」と書かれた章に引き込まれる。ワークシートに向かい、自分の価値観や強みを一つひとつ書き出していく。

その瞬間は、「ああ、これが私なんだ」と、胸の奥に何か確かなものが灯るような感覚になる。少しだけ、自分のことがわかったような気がする。

でも、日常に戻ると、その「発見した自分」は次第に霞んでいく。通勤の電車、人間関係、日々の忙しさの中で、また「いつもの自分」に戻ってしまう。

そして数ヶ月後、また新しい自己啓発本を手に取ってしまう。

そんな繰り返しに、心当たりはありませんか?

何度も棚卸しをして、自分を言葉にしてみる。そのたびに「わかった気」がする。でも実生活の中では、その「気づき」をどう行動に落とし込めばいいのか分からなかったり、具体的な場面で思い出せなかったりして、結局うまく活かしきれない。決めたことも忘れて、感情に流されてしまう。

振り返ってみると、自分の中に一貫性がないように思えてくる。どこを目指して生きているのかが、わからなくなる。

時には、以前読んだ本を再読してみる。でも、そのとき感じた「これが本当の私だ」という感覚は、一時的なものでしかなかった気がする。

本当にそうなりたいと願っているのに、大切にしたいことを忘れてしまったり、覚えていても口にする勇気がなかったり、人目が気になって踏み出せなかったり——。

そんな自分を振り返って、「やっぱり私は弱い」と思ってしまい、また新たな答えを求めて本を開く。

この繰り返しに、終わりはあるのでしょうか?

他の人は、どうしているのでしょうか?

こういうことは、一体誰に相談したらいいのでしょうか?


本当の自分は、言葉になる前に存在している

「本当の気持ちって何だろう」と自分の内側を見つめても、それを言葉にするのは難しい。

胸の中では、さまざまな感情が生まれては消えていく。どれが本物で、どれが一時的なものなのかは、すぐには判断できない。

頭にはいくつかの「らしき言葉」が浮かんでいて、それが気持ちと結びついているようにも感じる。でも、それが本心かどうか、確信は持てない。

僕が伝えたいのは、そのさらに奥にあるものです。

日常では意識されにくい、でも確かに存在している。控えめだけど力強い、それが「本当の自分」。

日々の生活の中で、それに出会うのは難しい。でも確かに、そこにある。

僕はそれを 「ウィル(WILL)」と呼んでいます。これは「意思」や「望み」といった明確な意志というよりも、自分の内側にふと感じる方向感覚のようなもの。明確な目標でも、論理的な理由でもなく、ただ「なぜかわからないけれど、こうしたい」と思う衝動。それがWILLの正体です。

それに気づくことができれば、「順序が逆転するリスク」から距離を取ることができます。

つまり、まだ自分の感覚が曖昧なうちに、外の期待に応えようと動き出してしまう——その順番の逆転です。

周囲に合わせるために、必要とされる自分を演じてしまう。それが、自分らしさとのズレを生むのです。

だからこそ、まずは自分の中のWILLを感じること。表現したい、知りたい、休みたい——どんな些細な感覚でも構いません。

その感覚と共にいる時間を増やすこと。それが、自分らしさの源泉となるのです。


「なんとなく」の行く手を信じて進む

「でも結局どうすればいいの?」——そんな声が聞こえてきそうです。

答えは、意外なほどシンプルです。

まずは、今この瞬間の、自分の内側にある「なんとなく気になる」「なぜか落ち着く」感覚を拾ってみてください。

たとえば、ふと気になった場所に行ってみる。本屋でなぜか手が伸びた本を読んでみる。あるいは、心地よく感じる人と少し多く時間を過ごしてみる。

そんなふうに、小さな「WILL」に寄り添って、ほんの一歩だけでも行動してみること。それが、始まりです。

その瞬間、あなたの内側では静かな変化が始まっています。今まで保たれてきた均衡がわずかに揺らぎ、不均衡が生まれる。その不安定さの中で、新しい統合が芽を出します。

この「揺らぎ → 統合」という見えないプロセスこそが、発達なのです。専門的にはそう呼びますが、ここではただ一つだけ覚えておいてください:その揺らぎこそが、あなたの可能性の始まりです。


自分を信じる力が育っていく

このプロセスを重ねていくと、自分を信じるという感覚が自然と育まれていきます。

自分を信じるというのは、単なる前向きな思考ではありません。「なんとなく、これが自分なんだ」と感じられる体質へと、少しずつ変わっていくことです。

そうなると、周囲の状況に左右されなくなっていきます。「私は、あの方向に行きたい気がする」と、曖昧だけれど確かな自分の感覚に従えるようになる。

結論を急がず、ゆるやかに「なんとなく、あっちなんだよな」という感覚を信じられるようになる。それが、自分だけの道を開いていく羅針盤になるのです。

どこにも用意されていなかった道が、自分の足元から現れ、歩くことで形づくられていく。そんな人生が、きっと始まります。


曖昧さを信じることから始まる

WILLは、目的地の見えない矢印。でも、確かなエネルギーを伴っている。

「自分の中に答えがある」とは、明確な言葉や論理が最初から存在するという意味ではありません。

それは、曖昧さを信じるという体験から始まるのです。

答えは探すものではなく、瞬間瞬間に生まれ、創られていくもの。

「自分にぴったり合う何か」が世界のどこかにあると信じるよりも、自分の中に浮かんできた方向性——その"行く手"を感じてみる。

その感覚を丁寧に味わっていく中で、次の一歩が開かれていきます。

選ぶのではなく、自分の中から少しずつ創り出していく。たとえば、霧の中を手探りで歩いているような感覚——足を一歩踏み出すたびに、道の手触りがふと現れてくるような。それが「今、この瞬間」に生まれる正解なのです。

この文章を読み終えたら、ぜひ、まだ言葉にならない自分の感覚に静かに耳を澄ませてみてください。

その小さな気配こそが、あなたのWILLです。

そこから、あなたの道が開かれていきます。

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